里山の午後 師走朔日(しわすついたち)
〜 里山の午後 〜
この道は、何度か通ったことのある里山の道。
この道を通るたびに、この場所からの風景を撮ってみたいという想いがありました。
今日のような青空と雲に出逢える休日を心待ちにしていました。
そして、今日、その時を迎えたのです。
農地は奥に見える集落に向かって広がり、集落の奥には小高い山があって、その向こう側には田園と街を抱え
る平野が広がり、そこから先は海へと向かうのです。
この場所に立つと、この山は小さな山ですが、慌ただしく追われる山の向こうの社会とは違う時計をもってい
て、お日様の高さがなだらかな時を刻む役割を果たしてくれているように映ります。
集落に向かう道はあるにはあるのですが、車一台が通るにも落っこちそうになるくらいのとても狭い道でした。
普通に考えるならば、手を加え、不安なく通れる道にすればいいのにと思うでしょうが、この道ひとつをとっ
ても、この場所にある不可侵な世界を守る大切な役割を担っているように思えてくるのでした。
そうです、この小さな山の向こうに目をやっても、空と雲以外、何ひとつ視界に入ってくるものはありません。
農業を営む十件余りの集落が自然の中にポツンとあって、ゆったりとした時が作物を実らせ、生きてゆくのに
必要な分の実りを届けてくれる。 その様に四季が移りゆく場所。
今、ここに立っている理由は、この場所がココロの網膜にその様に映ったからのように思いました。
うまく言葉にはできませんが、見えずとも、守るべき大切なものがあるのだろうなと感じました。
そう、この一枚におさめたかった静けさは、誰も奪っちゃいけない大切な何かだったのだと思います。