落日の落書き
〜 落日の落書き 〜
旧国道沿いの廃業したガソリンスタンド(GS)の壁。
実は60年程前に建てられた壁です。
道を挟んでもう一軒、向かいあって建っていて、連れて行ってもらったことはないのですが、一軒は小さく質
素で、向かい側のガソリンスタンドは大きく立派に見え、フランス料理のレストランまであった。
単にドライブインレストランというものならもっともっと南の田舎のほうにもあった。
でもこの場所は、外観も洒落ていて、白い塗り壁にランタンの灯をともしていたように覚えている。
ガソリンスタンドにフランス料理店なんて、不思議な組み合わせに思えたが、何年もそこにあると見慣れてし
まった存在ではあった。
そして気が付けば、いつの間にか取り壊され、何軒もの住宅が立ち並んでいたのです。
で、こちら側に残っている方の壁は、対面の小さな小さなガソリンスタンドのものです。
壁の取り壊しも大変なのだろうなと考えさせられるほどに、利用価値を見い出すのに苦慮するような土地の形状
と狭さです。
通常、この手の落書きは目障りに映るのですが、立ち入り禁止のロープの内側にお構いなしに生えた雑草、それ
に壁の上からは蔦のツルのように生命を伸ばそうとする葉、壁に映る緑の影も、どうしてだろう落書きまでもが
そこにあることに違和感を覚えないのです。
僕の中では、この件はまだ説明がつかないままの不思議な事象のひとつになったままです。